越冬群の春の管理方法

春の分蜂捕獲から順調にミツバチの群が大きくなり、秋の採蜜シーズン、厳しい冬を乗り越えた後に、3月頃からミツバチ達は春の分蜂の準備に入ります。それまでは巣が大きくなれば、養蜂家さんは単順に巣箱を増設すれば良かったのですが、越冬後の春先は巣箱内の変化が大変激しいため、巣内の状況に応じて対応方法が異なります。巣の状況に応じてどのように巣箱を管理するべきか、時々質問が来るのでここでお答えしたいと思います。

分蜂前後では巣内でなにが起きているのか?

3月〜5月の頃のミツバチは分蜂シーズン前後になると、働き蜂の数を増やそうと蜜と花粉を幼虫にどんどん与えます。春先に外から集めて来た花蜜だけでは足らずに巣内に貯蔵しているハチミツをあっという間に使ってしまいます。そもそも巣内に貯蔵するハチミツは春の分蜂シーズンの為に貯蔵していたものであり、その殆どがその時に消費されてしまいます。その結果、分蜂前後の巣の中はハチミツが消費されてカラカラの状態になっています。

分蜂中の巣箱内の様子

分蜂前後に採蜜しても良い

カラカラになった巣が詰まった巣箱をそのまま置いておいても良いのですが、春先は誘引用に巣箱が手元にたくさんあった方が良いので、巣箱が6段〜7段積んである場合は、天井側から開封してカラカラになった巣箱(1,2段)を切り出しても良いと思います。その際、下の方まで巣を取り過ぎると幼虫が育っているエリアまで切り取ることになってしまうので注意が必要です。分蜂シーズンは幼虫をたくさん育てる事がミツバチの優先事項となるため、普段は卵を産み付けない上のエリアまでが幼虫の育児室になっているケースが多いのです(幼虫は大事な存在だから、通常はできるだけ巣の真ん中あたりで育てます)。天井側から開封後に巣の中の状態を見ながら、1段取るか2段取るかを判断していきます。残念ながら巣を採取した際に育児エリアまで及んでしまった場合は、巣をそのまま元に戻すという対応でも良いと思います。しかしながら、多少の幼虫を殺してしまっても分蜂前後の時期には、たくさんの幼虫が育っているので、群の体勢に影響はないでしょう。

分蜂シーズン終了後の巣箱管理

越冬した群は新女王蜂が生まれてくる数に応じて、複数回分蜂を行います。分蜂する毎に蜂球は小さくなり、巣内のハチミツは減少します(この時期はハチミツが増えることはない)。そして、全ての分蜂終了後は、越冬した巣箱の中には新女王蜂と数千匹の働き蜂が残され、巣は以下の状態が考えられます。

1.巣の中が完全にカラカラの状態

そのままの状態では巣内に古い巣が残っているため、新女王蜂の群が巣を新しく造成出来ず、その後に巣がなかなか大きくなりません。そのため、分蜂が完全に終わった頃を見計らって(5月中)、巣箱の中の古い巣を全て除去します。除去作業中には新女王蜂がどこに居るかを把握しながら作業をすすめ(撤去した巣板に執着しているため、周辺をうろちょろしている)、作業が終わった後は新女王蜂を優しく巣内に誘導して終了です。その後、その群は新しい巣をゼロからスタートします。つまり、春の誘引が成功し、新しくスタートする状態と同じ状態になります。私はそれをミツバチのグレートリセットと呼んでいます

幼虫がたくさん居るのにグレートリセット(巣の全撤去)してしまうと、その後、群が逃避してしまう可能性が高くなりますので、グレートリセットは慎重に行ってください。判断が付かない場合はミツバチに任せてしまうほうが良いでしょう。私も時々失敗します。もし、実施するなら、6月に入ってからの方が良いようです。

2.巣の中にハチミツがそこそこ(50%くらい)残っている状態

巣の中にハチミツがそこそこ残り、巣内がそんなに荒れていなければ、残されたミツバチ達がそのままその巣を引き継ぎ、巣の造成を行っていきます。そのままミツバチ達にお任せしておけば良いでしょう。順調にいけば夏場に採蜜も可能です。しかし、もし夏場に掛けて巣の造成が進まない状態が続くようであれば、上記のようにグレートリセットしてあげた方が良い場合もあります。

自然界ではミツバチの古い巣の掃除は他の生き物が担当している

古い巣はミツバチ達は自分達で除去しようと顎を使って切り落としたりすることはありますが、巣が大きくなるとそれを全て破壊することはできません。多少のメンテナンスで巣が再生できればミツバチはそのまま巣を継続使用しますが、ハチミツが全く残っていなかったり、巣内がひどく荒れているとミツバチは新天地に引っ越してしまった方がてっとり早いので、逃避してしまうことがあります。分蜂シーズン終了後にはそのような状態になりやすいので、巣内がカラカラで荒れていると判断したら、上記のように養蜂家が自ら巣内を掃除した方が良いケースもあります。

では、自然界では巣の掃除は誰が担当しているのでしょうか?実は、スムシやゴキブリ、ダンゴムシさんなどが担当しています。スムシをミツバチの外敵と勘違いしている人が多いようですが、スムシはミツバチの掃除屋さんなので、スムシがいないとミツバチ達は常に新しい新居探しに苦労することになります。いわば、スムシとミツバチは共存関係ということ。人間目線でミツバチとスムシの関係を判断しても意味がないのです。

スムシがミツバチの巣を食い荒らすのは、ミツバチが元気をなくした時です。そうならないように、ミツバチが日頃から免疫力を落とさないように、巣箱周辺の環境作りをおこないましょう。安易に薬剤を投与することは、ものの本質を分からなくしてしまうので、控えましょう。実際、JBeeFarmでも薬剤投与なしでミツバチも元気に飛び回ってます。

冬期中にミツバチが消滅したら、なるべく早く掃除して、ミツバチを迎え入れる準備を

ミツバチ群が越冬中に消滅したら巣内を全て掃除して分蜂シーズンにミツバチを迎え入れるのがベストですが、群が消滅した後、古い巣が残されている状態の巣箱には、盗蜜するためにどこからかミツバチがやってきます。それをミツバチ群が復活したと勘違いすることもあるので、群が消滅したらできるだけ早く内部を点検してグレートリセットしてあげると、分蜂シーズン中に新しい群がやって来て良いスタートが切れると思います。

今の時期の巣箱管理については、巣箱をいじくり回すにはリスクは低いので躊躇わずにやってしまうのが得策です。失敗してもミツバチが逃げて行くだけで、気温も温暖だし、花もたくさん咲いているし、ミツバチにとってもやり直しが十分に効く時期です。習うより慣れろと私は言いたい。