採蜜のススメ

ニホンミツバチ養蜂をやっていく上で一番難しいのはハチミツの採取かもしれません。どのような時期に採取するのか、どうすればミツバチも殺さずにスムーズに採取できるのか、美味しいハチミツはどうすれば採取できるのか、具体的な沪過の方法は?どんな設備が必要なのか?など色々と分からない事が多いと思います。ハチミツの採取をする上で、大事なポイントを説明します。

1.採蜜のタイミング

一般的に採蜜の時期は越冬した群は春の分蜂後(5月頃)に、その年の春に入居した群はその年の秋(10〜11月)に採蜜することが多いです。しかし、群の勢いや巣の大きさ、巣箱の高さによっては採取時期を延期したり、逆に早めたりすることがあります。採取のタイミングは群や巣箱の状況によって夏場(7月〜9月)や冬場にも採取したいと思うことがありますが、JBeeFarmではおすすめしておりません。夏場の高温状況でハチミツを採取すると巣が非常に柔らかくなっているので、ハチミツ採取後に巣がハチミツの重力に負けて落下崩壊してしまうことがあります(巣は蜜蝋で構築されているため、高温で柔らかくなる)。その際、女王蜂が押しつぶされるなどすれば群自体が消滅してしまいます。また、冬(12月〜2月)は春夏秋に比べて花が咲かないので、その時期にハチミツを採取するとミツバチの非常用の餌が無くなってしまう可能性があります。よって、冬場はミツバチの為にハチミツを残しておいておくべきでしょう。また、冬場はミツバチの活動も停滞し(半冬眠状態)、もし誤ってミツバチの群にダメージを与えてしまうと、その時期に群の盛り返しは非常に難しくなります。このようなことから、夏場と冬場のハチミツの採取は実施しない方が良いと思います。

2.採蜜時のルール

JBeeFarmではニホンミツバチの巣箱を重箱式巣箱で管理しています。ニホンミツバチは巣箱の天井側(上)から地上の方に巣を伸ばして行きますので、最終的には巣箱の最上段の層がハチミツの層、その下の層が花粉や幼虫の育児室、さらにその下に働き蜂や女王蜂が生活している層で構成されています(厳密に層が分かれているわけではない)。形成されたハチミツを採取する際には最上段のハチミツの層だけを巣箱から切り離して採取します。講習会などで皆さんにお伝えしているように、JBeeFarmでは巣箱7段が全て満たされた状態であれば、上から2段を採取するようにしてます。また、巣箱6段が満たされている場合は上から1段を採取するなど巣の大きさによって採取する巣箱の段数も調整します。巣箱が5段以下の場合では採取を実施しません。始めて採取する場合などは人間の欲が出てしまい、過剰に採取してしまう事がありますが、その際に花粉や幼虫の層を傷付けたり、ハチミツを多く採りすぎたりして、ミツバチの群れにダメージを与えてしまうことがよくあります。最悪の場合、ミツバチが逃避してしまうことがありますので、無理なハチミツの採取は止めましょう。その時に採取できなくても、数ヶ月後には採取できるのですから慌てる必要は全くありません。また、無理なハチミツの採取は結果としてハチミツの品質を落としてしまうことになります。なぜなら、ミツバチは周辺から集めてきた花蜜を巣内で水分を飛ばして糖度を上げていくのです。水分が飛ぶ前のハチミツを採取すると、水っぽいハチミツを採取することになり、無駄な発酵を促してしまうことになります(酵母などの微生物は水分量が少ないと活動が抑えられる)。

3.巣箱からの切離し方法

具体的に巣箱からの巣の切り離し作業について説明します。上記でも述べたように巣箱の最上段がハチミツの層となっているので、最初に天井蓋と内蓋を撤去します。天井蓋と内蓋との間に蟻が巣を作っていたら、ブロアで吹き飛ばしてしまいましょう。内蓋を開ける際は蜜蝋で接着されているので、巣箱と内蓋との間にマイナスドライバーを差し込んでパカッと思い切って開けます。開ける際にミツバチが一斉に出てくることがあるので、ミツバチを潰さないように気をつけます。取り外した内蓋はそのままそーっと巣箱の土台の網の近くに立てかけておくと、ミツバチが巣の中に入っていきます。次は巣箱を切り離します。最上段付近にいるミツバチを下側に追い出す為にブロアで天井側から風を送り込みます。ある程度ミツバチが下に降りたところで、ピアノ線を巣箱の最上段とその下の段の間に通して切り離していきます。その際、上にミツバチが這い上がってこないように息を上から吹き込みましょう。また、ピアノ線をペンチなどで掴んで作業すると大きな力を掛けずに切り離す事ができます。ピアノ線が通り難い場合は、巣箱と巣箱の間にマイナスドライバーなどで隙間を作ってあげると、通りやすくなります。

巣箱の切り離しが終了したらミツバチを潰さないようにスリット板を巣箱の上に設置します。

スリット板

そして、内蓋に付いてるミツバチを巣内に戻しつつ、付着した蜂の巣を包丁などで削ぎ落とします。ある程度の巣が除去できたらミツバチを潰さないようにスリット板の上に内蓋を乗せ、天井蓋をその上からそーっと乗せて完了。最後は屋根板を乗せロープで固定しましょう。

切り離した巣箱は採蜜用の土台の上に置いてミツバチをブロアで吹き飛ばします。土台を巣箱の近くに置き、ミツバチを巣箱の方向に吹き飛ばすことで、吹き飛ばされたミツバチは地上を這って巣箱内に戻っていきます。そして、採蜜用土台の下にタッパーなど容器を置き、巣箱の串を取り外します。片側の穴から棒を差し込み木槌などで数cm押し出します。押し出された側の串をペンチなどで掴んで引っ張りだします。2本の串を引っ張りだしたら、包丁で巣を落とし、容器の中に巣箱を落とし込みます。

蜂の巣を取り出した巣箱はカビが生えないように水洗いして乾燥させます。

詳しくは秋に開催する採蜜沪過ワークショップにご参加ください。

3.沪過の方法

沪過の方法についてはいろいろありますが、ここでは重力の自然の力で自然沪過した後に、残りカスを圧搾してハチミツを抽出する方法を紹介します。巣から切り出したばかりの巣は蝋の蓋で塞がれているので、蓋の部分を包丁などで削ぎ落とします。それを沪過布で沪過してハチミツだけを取り出すのですが、重力だけで沪過されたハチミツは透明感があり、まろやかで混ざり物も少なく、花粉なども比較的含まれていないものが多いです。その後、残った巣を圧搾すると、ハチミツが採取できますが、渋みや酸味が強いハチミツが採取できます。沪過布は養蜂専門店やネットショップで購入する事ができますが、生地屋さんで布(オーガンジー)を購入することもできます。圧搾する際は、市販の圧搾器を購入しても良いですが安い買い物ではないので、漬物石など自宅にあるもので絞り出してもそれなりに絞り取れます。最後に残った絞りカスは蜜蝋に加工できますので、捨てないで再利用しましょう。

詳しくは秋に開催する採蜜沪過ワークショップにご参加ください。

4.必要な備品

採蜜台
切り出した巣箱から巣だけを取り出す際に乗せる作業台。
実際に使用する際は台の下にタッパなどの容器を設置しておきます。
ブロア
パッテリー式ブロアがお薦めです。
ピアノ線
巣箱本体からハチミツを切り離す際に使用します。
細くて、引っ張りに強いピアノ線が最適です。
沪過布
沪過布は養蜂専門店やネットショップで購入する事ができますが、生地屋さんで布(オーガンジー)を購入することもできます。
圧搾器
沪過した巣から最後に絞り出す際に利用します。
漬物石などで代用することも可能です。