ミツバチの大量死は結構頻繁に起こっている
今日も管理しているニホンミツバチがたくさん死んでいるとの問い合わせがありました。私も以前から気になっていた現象なので、何となくはその原因について考えてはいたのですが、養蜂の仲間も増えてきましたし、質問が来ることが多くなってきましたので、今回、自分なりの見解をまとめてみたいと思いました。正解しているかどうかは問題ではなく、現状分析から自分なりの見解を出す事が重要だと思っています。間違っていたら後日修正すれば良いくらいの軽い認識なので、決して正解と思わずに読んでください。

現状を分析してみる
ニホンミツバチの群れではだいたい福岡で11月くらいから寒い時期にかけて夏までそれまで元気だったミツバチが飛べずに地面を這い回りながら、最後は巣箱周辺大量に死ぬ事があります。私の管理する巣箱でも毎年5%割〜10%くらい発生しています。ネットや書籍の情報だとアカリンダニの寄生によるものだと説明されていました。私の管理する巣箱(20群弱)の状況を整理すると以下のとおりです。
1.Kウイングの症状があり、アカリンダニの寄生の可能性がある。
2.毎年11月くらいに発生することが多い。
3.ミツバチの群によって、発生したりしなかったりする。
4.一時的に症状が発生する群があるが、放置すると発生した群の50%は無事に越冬して分蜂に至る。
5.薬剤(メントール)は効果が見られなかった。
6.蜂の成虫だけに発生する現象(蜂の幼虫が死ぬ事はない)である。
Kウイングの症状がでていることから、アカリンダニがミツバチの大量死の原因である可能性を疑っているのですが、そうであるならば、どのようなことが起きていると考えられるのでしょうか?
現状分析から仮説を立ててみる
通常、3月〜10月には気温も高くミツバチの活動そのものが活発であり、蜜を集めることはもちろん、巣内での動きも活発になります。ミツバチは普段の活動の中で体に付着した寄生虫また、菌やウイルスなどをグルーミミング(自分や仲間が体を舐める)することで体や巣の状態を清潔に保ち、ミツバチ個体や群全体の健康状態を高めています。3月〜10月に掛けてはミツバチのグルーミングがしっかり行われ、ダニを除去し、Kウイングによるミツバチの大量死が起こらないと考えられます。しかしながら、11月になると気温が急に下がりミツバチの活動も停滞するため、グルーミング作業もおサボりがちになってしまうためダニが巣内で繁殖しているのかもしれません。一方、ダニにとっては11月の気温はまだ活動期でありミツバチに寄生してまいますが、12月以降になると寒さがさらに厳しくなりますので、ダニの活動もまた停滞することによりミツバチへの寄生が収まるのかもしれません。
また、ミツバチ群個別のダニに対する耐性の違いについて推測します。観察した状況から、ミツバチはダニに対して耐性があるグループと無いグループがあるようです。おそらく、群個別に温度によってグルーミングをするか、しないの閾値(グルーミングをするかしないかの判断基準)が異なるのではないかと考えます。例えば、気温が15℃になるとミツバチがグルーミングを止めてしまう群もあれば、10℃でもグルーミングする群があると仮定します。一方、ダニ側にも16℃で活動を止めてしまうタイプもいれば、12℃まで活動を止めないタイプもいる。それを考えると、ミツバチの群と寄生するダニのタイプとの相性によって蜂の大量死が出たり出なかったりするのかもしれません。つまり以下のような関係性が考えられます。
ミツバチA群 10℃以上でグルーミング実施 | ミツバチB群 15℃以上でグルーミング実施 | |
ダニ 12℃以上で活動 | ○ミツバチの耐性あり | ×ミツバチの耐性なし |
ダニ 16℃以上で活動 | ○ミツバチの耐性あり | ○ミツバチの耐性あり |
対策は見守ること
これが事実であるとすると、ダニに対する耐性を持つミツバチの群だけが毎年生き残っていくということになります。逆にダニも生き残るように進化していくので、ミツバチとダニとの軍拡競争が永遠に続くことになります。もしくは、ダニが敗北してミツバチ以外の昆虫に寄生して生き残る道を選ぶかもしれません。そう考えると、我々人間が何もしないで見守るのがミツバチにとって一番良いような気がしますよね。目の前のミツバチ群だけを見て、あれこれ手を加えることがあまり意味のないことであるように私は思います。自然界では環境に適応するものだけが生き残っていくのは当たり前なのです。
何度も言いますが、上記の推論が正解であるかはわかりません。間違っている可能性も大いにあると思っています。大事なことは、自然を観察して状況を整理し、自分なりの考えを持つことだと思います。ミツバチは色々と教えてくれます。
(追記)
2024年〜2025年にかけての冬の状況ですが、蜂群の消滅は数群ありましたが、特に変わった状況ではなく、おそらく女王蜂の寿命と思われる自然消滅の症状しかありませんでした。夏場は蜂が死ぬ時に外出先で死ぬ事が殆どですが、冬は巣箱内に籠もっていることが多いので、巣箱内での大量死に見える事もあると思います。冬場の点検の際に蜂がKウイング状態で死んでいないか、暖かい日に地面を這って歩いていないかを確認することくらで、私が出来ることは蜂にとって過ごしやすいと思える環境を作る事だけです。何度もいいますが、冬場は巣箱内のカビの発生に気を付けてください。冬場に陽のあたらない場所の巣箱は病気になりやすいです。
大変参考になりました。
昨日朝20匹、今朝(7日)40匹ほど死んでいました。
今日、メントールを取り寄せて巣箱に入れてみようと思っています。
何とか、分蜂させてその後、採蜜まで出来たらベストなんですが?
Kotani
こんにちは。
投薬での対応も効果があれば良いですね。
私は薬剤投与は全くやっておらず、普段の蜂の生活環境を良くすることだけを考えておりまして、今年は1群も大量死はありませんでした。
通りすがりのRicoチャンです。非加熱ハチミツが好物です。
CCDについてネット散策していましたら、【In Deep】というサイトにて貴サイトの主旨と関連する記事を見つけましたので、ご参考までにシェアいたします。
↓
『https://indeep.jp/surprising-fact-bees-eat-microbes-in-flowers/
[衝撃] ミツバチは花の蜜や花粉を食べているのではない。彼らは食糧としての微生物がいなければ生きていけない「肉食」であることが判明。そのことから、ハチの大量死が「殺菌剤」と関係する可能性が浮上
投稿日:2019年8月31日』
一言でまとめると、殺菌剤で餓死させてしまう。
…のだそうです。
釈迦に説法かもしれませんが、あしからず。 Ricoチャン
情報、ありがとうございます。
蜂の世界は分かったようで、分からないことばかりですね。
人間に関しても、食料を食べているのは人間ではなく、腸内の細菌ではないかと思えてきます。
違う見方で物事を考えることの大事さを、自然は教えてくれます。