巣箱の設置場所について

日本ミツバチの巣箱を設置するにはどのような場所が良いでしょうか?と良く聞かれます。一言でいうと、「あなたがその場所にいて心地良いと感じる場所、ストレスに感じない場所」と答えます。ミツバチが空き家の床上や床下にしばしば巣を作るのはなぜなのでしょうか?具体的にはどんな場所がミツバチにとっても人間にとっても良い場所と考えられるのか、いくつかポイントを抑えて説明します。

木陰もあり、風通しも良い場所

設置場所のポイント

周辺に蜜源がたくさんある

巣箱設置場所の周辺に雑木林や街路樹などが多いと蜜源も豊富でミツバチにとっては有利な場所になります。そのような場所では巣の成長が早くミツバチにとっても負担が少なくなります。また、そのような場所では既に多くのミツバチ達が生息している可能性が高いため、春の誘引もやり易い場所となります。周辺がどのような環境であるかをグーグルマップなどで確認してください。逆に杉や檜などの人口林や広大な畑や田圃では蜜源は多くはありません。人間が住んでいる地域には庭に咲いている樹木など、意外と蜜源は多いです。

音や振動となるストレスがない

ミツバチは振動に対して異常に嫌がります。一時的な振動では多少怒る程度ですが、継続的に発生する振動では群が逃避してしまう事も良くあります。ダンプカーやトラックなどが頻繁に走行する大きな道路に面した場所や、近くの工事現場で杭打ち作業が行われている場所などは避けた方が良いでしょう。また、エアコンの室外機の側に置くことは避けましょう。室外機からの振動や音がミツバチにとってもストレスになると思われます。静かに暮らせる場所がミツバチにとっても良いはずです。

風通しが良い(乾燥している)

ミツバチにとっての一番の大敵は湿気といって良いです。湿気が多いと巣内にカビが発生し、ミツバチが病気になり易い条件となります。最悪、群が消滅してしまうことが良くありますので、なるべく年間を通して風通しの良い場所に設置してください。特に、冬場の湿気は要注意です。風通しが悪く、照も当たらない建物の北側になるような場所は最悪です。そのような場所では周辺に苔が生えていますので、巣箱設置前に周辺の植生を観察してみましょう。

春から秋に掛けてのミツバチ活動期にはミツバチは頻繁に花蜜を集め巣内で乾燥させるため、巣内は湿気で充満しています。ミツバチは集めた花蜜を乾燥させるために、自身の翅で巣内の空気を外の空気と循環させますので、なるべく巣箱周辺は乾燥している方がミツバチにとっても換気のための労力が減り、都合が良いのです。

ミツバチの通り道がある

巣箱の出入口周辺ではミツバチの出入りが激しくなり、ミツバチは直線的に飛行移動しますので、その付近に障害物となるような木の枝や壁などがあると、ミツバチは出入りが難しくなります。また、秋にはスズメバチの襲撃がありますので、その時はミツバチが緊張して、スズメバチに捕まらないように普段よりもさらにスピードを上げて出入りします。なので、お庭などに置く際には巣箱入口から庭の外までミツバチの飛行コースが確保できるような空間を作って上げてください。また、周辺の草刈りなどを行って飛行ルートを確保しましょう。巣箱周辺の草刈りは風通し対策にもなります。

霜が降りない

盆地など、すり鉢状になっている低地では冬場に霜が降りやすくなります。そのような土地ではミツバチが越冬するには厳しい環境になります。盆地は夏場は暑いし、冬場は冷え込みますので、盆地になるような土地での設置は避けましょう。できるだけ、地面から離れた高い場所に巣箱を設置するのが良いと思います。

夏場に木陰になる

夏場の暑さはミツバチにとっては大敵です。近年の夏の暑さは尋常ではありません。炎天下の下、巣箱をそのまあま置いておくのはミツバチにとっても地獄である一方、その暑さで巣が溶けて巣落ちが発生してしまいます。巣落ちすると、その衝撃で女王蜂が死亡し、群が全滅してしまうことがありますので、できるだけ木陰などに設置してください。木陰が理想ですが、そのような場所に置けない場合は簾や葦簀などで日除け対策を実施してあげましょう。落葉樹の下に置くと、夏場は日除けとなり、冬は日差しが差し込みますので、一番理想的です。

スノコ型日除け

周辺で農薬や殺虫材が撒かれない

周辺が畑や田圃だと時期に応じて農薬や殺虫剤を撒きます。水に溶けた薬剤をミツバチが巣内に持ち込んだり、薬剤が風に乗って巣内に直接入り込んで来たりすることで、ミツバチに被害がでます。もし、周辺に畑や田圃があるのならば、できるだけ避けるべきです。春先のケムシが出る時期、6月の田圃の除草剤散布シーズン、夏場の青物野菜の農薬散布、夏場から秋に掛けての稲に散布するネオニコチノイド系農薬は被害が顕著に出やすいです。ミツバチだけでなく、人間にも見えない形で入って来るものなので、十分に気を付けましょう。住宅地の街路樹などでも殺虫剤を散布するケースは多く、ミツバチが痙攣しながら死んでしまうこともあります。日本は農薬大国であり、世界の農薬のゴミ処理場です。

周辺で煙を焚かれない

よく、プロの養蜂家さんがセイヨウミツバチに煙を吹きかけて光景を見たことがあると思います。プロの養蜂家さんは煙の材料(スギの葉と聞いている)を選んで吹き掛けていると思いますので、ミツバチにとってもそれは大きなストレスにはならないと思いますが、例えば野焼きなどで発生する煙はミツバチにとっても大変辛いものとなります。かつて、巣箱のすぐ横(3mくらいの場所)で野焼きをされて、ミツバチが豹変したことがあります。温和だった群が凶暴化し、最後は消滅してしまいました。周辺で野焼きやバーベキューをするような場所では巣箱を設置するべきではありません。また、周辺に麦畑など焼き畑をするような場所も避けるべきです。

ミツバチ目線で考えるように心掛ける

最初に巣箱を設置するときは人間目線で何事も考えがちです。お庭に置きたい時にここに使ってないスペースがあるから丁度良いとか、ここは人間が通るからダメだとか、何事も人間の都合で巣箱を設置するケースが見受けられます。しかし、ミツバチにとってその場所が良いかは全く別の話です。人間にとって都合の良い場所がミツバチにとって都合の良い場所ではないということを前提に、設置場所を検討してみてください。もし、そのような場所でない場合は、その場所には置かない方が良いということです。

設置場所は最初の場所に拘る必要はない

最初はどうしても自分の庭に置きたいとか、マンションのベランダに置きたいとか思うかもしれません。しかし、現代社会では近隣住民の理解を得るのも大変です。自分の庭に置いたが、苦情が来て巣箱を移動させたというケースも珍しくありません。そのために、次の設置プランを考えて置く事も重要です。自分で土地を購入して巣箱を設置するのも良いですが、知り合いの空いている土地の一部を貸してもらうことでも良いと思います。謝礼はお金を支払う必要はありません。採取したハチミツの一部を分けて上げてください。地主さんにとっては休眠地でハチミツが採れるとなれば、喜んで次の土地を紹介してくれるはずです。使わない土地は有効活用していきましょう。

住宅地では近隣住民からの苦情は覚悟する

ミツバチは越冬中の太陽が出る暖かい日などには時々外を飛び回ります。その際に周辺の干してある洗濯物や白壁に黄色い糞をすることがあります。最近は洗濯物に柔軟剤などを加える家庭も多く、その強い香りに引き寄せられたミツバチが洗濯物を汚すケースが見受けられます。また、新興住宅街などでは白壁が多く、その壁にも糞をすることが良くあり苦情が寄せられた結果、巣箱を泣く泣く移動させるケースもあります(昔からある集落などではそのようなケースは少ないようです)。

周辺の住民の方にニホンミツバチの事を理解してもらうことも大事ですが、全ての方に理解してもらうのは大変な労力を要します。できるだけ新興住宅街などは避けるべきですが、最初の一年くらいは身近にミツバチがいてくれると勉強にもなりますし、自宅周辺の環境が分かってくるので、置いてみても良いと思います。いつ苦情が来て移動させても良いように、移動先の場所を早めに見つけておきましょう。

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