冬の寒さで見えてくる同一群の中での多様性

2025年2月に入り寒い日が続いていますね。冬期中のミツバチ達も巣箱の中で大人しくしています。ニホンミツバチは日本の厳しい寒さにも耐えられるので、寒さにそれほど心配する必要はありませんので安心してください。福岡では過去−4℃の寒波でもしっかり耐えていましたし、さらももっと厳しい地域でも越冬しています。ニホンミツバチは日本列島の環境の厳しさの中で何万年も生き残ってきた子孫ですから大丈夫です。越冬できない群は寒さに耐えられないというよりは別の要因の可能性が高いと思いますので、地道にミツバチを観察してその原因を追求していきましょう。

冬期中は巣箱の中で大人しくしているニホンミツバチですが、昼真の気温が8度付近まで上がってくるとチラホラ外出し始めます。外出し始める気温は群によって違いがありますし、また、おそらく同じ群の中でも外出に耐えられるグループとそうでないグループに分かれていると思われます。つまり、寒さへの異なる耐性を持つグループが複数存在していると考えられます。

それはなぜかというと、女王蜂は分蜂シーズンに複数の雄蜂と交尾してお腹の中にそれぞれの雄の精子をため込んでおくのですが、卵を産み付ける時にその異なる精子を使い分ける事ができるからです。どのような判断基準でそれを使い分けているかは不明ですが、同じ群の中でも働き蜂が全て同じ遺伝子を持っているのではなく、複数の遺伝子を持つ働き蜂のグループが共存している状態であり、それが恐らく温度耐性の異なるグループを複数作っていると考えられそうです。

また、同じ群の中でも体型や色の異なるグループがいることに気が付くと思います。全体的に明るい黄色味の強い蜂や、全体的に黒味の強い蜂がいるなど、複数のグループが存在している事に気が付きます。前者の黄色味が強いグループのミツバチは夏場に体に熱が籠もらないように熱を反射させることができるために夏場に強いグループと考えられます。また後者の全体的に黒味の強いミツバチは日差しが弱く気温が低い状態でも体に熱が吸収されやすいため、冬場に強いグループと私は推測しています。それが正しいならば、おそらく、冬の寒い時期に飛び回っている蜂は黒っぽい蜂が多いと推測できますし、実際に黒い蜂が飛び回っている事が観察出来ると思います。

このような事実を突きつけられると自然とは本当に無駄の少ない効率的な仕組みで動いているなと感心してしまいます。ニホンミツバチの生態を把握する上で、直接観察できることからその先の見えない状況までを推測することが自然を理解する上で非常に大事であるような気がします。全ては推測ではありますが、それもまた宜しいかと。